3つのターゲティング戦略とは?無差別型・差別型・集中型の違いと比較

問題集を3周したのに、「差別型」と「集中型」の選択肢でまた手が止まる。

「本番でもここで1点落とすかもしれない」と、テキストのページを行き来していませんか。

結論から言うと、3つの違いは「狙うセグメントの数」と「商品・広告を分けるかどうか」の2点で見分けられます。

3つとも出発点は同じセグメンテーションで、違うのは「その後に経営資源をどう配るか」だけだからです。

この記事では架空の会社の事例と比較表を使い、選択肢を見た瞬間に判断できるところまで整理します。

今回の記事の内容

  • 無差別型マーケティングの特徴とメリット・デメリット
  • 差別型・集中型マーケティングの特徴と違い
  • 3つの戦略の比較とマーケティング検定2級の頻出ポイント

市場を細分化(セグメンテーション)し、標的市場を選んだ(ターゲティング)後は、どのように市場を攻略するかを決める必要があります。

この記事では、代表的な3つのアプローチについて詳しく見ていきましょう。

STPの全体の流れはSTP分析の記事で、ターゲティングそのものの意味はターゲティングとはの記事で整理しています。

本記事では、麦茶を作る架空の中堅メーカー「なごみ飲料」を例に、同じ会社が3つの戦略を選んだらどう変わるかも見ていきます。

なごみ飲料は説明用の架空の会社で、実在の企業とは関係ありません。

①無差別型マーケティング(市場全体を狙う)

①無差別型マーケティング(市場全体を狙う)のイメージ

無差別型マーケティング(Undifferentiated Marketing)とは、市場全体を1つの市場として捉え、すべての顧客に同じ商品・同じマーケティングを行う戦略です。

顧客の共通ニーズに着目し、違いよりも共通点を重視します。

例えば、塩、砂糖、ティッシュなどの日用品において、市場全体に同じ商品、同じ広告、同じ販売方法を展開するイメージです。

架空のなごみ飲料なら、麦茶1種類を同じパッケージ・同じCMで、全国のスーパーに並べる形になります。

「マス・マーケティング」と呼ばれることもあり、試験では「市場全体」「共通点」「単一の製品」が見分けの手がかりです。

無差別型のデメリット(注意点)

個別のニーズを満たしにくいため、ニーズ対応が弱くなる点がデメリットです。

また、価格競争に巻き込まれやすくなります。

同じ市場全体を狙う会社が複数いると、どこも似た商品になり、違いを価格でしか出せなくなるためです。

なごみ飲料の麦茶の隣に、そっくりな麦茶が並んでいれば、買い手は安いほうを選びやすくなります。

無差別型のメリット

最大のメリットは「規模の経済」を活かせることです。

大量生産による製造コストの低下や、全国一律の広告展開による広告効率の高さが挙げられます。

また、商品数が少ないため管理が簡単です。

調査や商品開発をセグメントごとに分けなくてよいので、手間も1回分で済みます。

②差別型マーケティング(複数セグメントを狙う)

②差別型マーケティング(複数セグメントを狙う)のイメージ

差別型マーケティング(Differentiated Marketing)とは、複数の市場セグメントを対象に、それぞれに異なる商品やマーケティングを行う戦略です。

例えば自動車メーカーが、若者向けにはコンパクトカー、ファミリー向けにはミニバン、富裕層向けには高級車を提供するように、顧客ごとに商品を変えてアプローチします。

架空のなごみ飲料なら、子ども向けの小さな紙パック、オフィス向けの大容量ボトル、贈答向けの茶葉ティーバッグを作り分けるイメージです。

見分けのポイントは、狙うセグメントが2つ以上あり、セグメントごとに商品や広告を変えているかどうかです。

差別型のデメリット(注意点)

商品ごとに開発費、広告費、在庫管理費などがかかるため、全体的なコストが増加します。

また、商品数が増えることで管理が複雑になります。

よくある失敗は、セグメントを細かく分けすぎて、1つあたりの売上がコストに見合わなくなることです。

分けた分だけ売上が伸びるとは限らないため、追加のコストに見合うかを先に確かめる必要があります。

差別型のメリット

各セグメントのニーズに合った商品を提供できるため、顧客満足度が向上します。

また、複数の市場を獲得することで市場シェアの拡大が見込め、他社との差別化もしやすくなります。

1つのセグメントの売上が落ちても、ほかのセグメントで支えやすい点も強みです。

③集中型マーケティング(特定市場に絞る)

③集中型マーケティング(特定市場に絞る)のイメージ

集中型マーケティング(Concentrated Marketing)とは、特定の市場セグメントだけに経営資源を集中する戦略です。

登山用品専門メーカーや、高齢者向け化粧品メーカー、プロ向け工具メーカーなど、特定の市場に特化してビジネスを展開します。

架空のなごみ飲料なら、キャンプや登山をする人向けに、持ち運びやすい麦茶スティックだけを作って売るイメージです。

■ ここがポイント

登山用品メーカーがテントもウェアも作るように、商品が複数あっても、狙う顧客層が1つなら集中型と考えます。

集中型のデメリット(注意点)

市場が縮小した場合の影響を直接受けるため、リスクが集中しやすいという弱点があります。

また、市場規模自体が小さいため、成長に限界が訪れる可能性もあります。

小さな市場でも利益が出ると分かれば、資金力のある大きな会社が後から参入してくることもあります。

集中型のメリット

特定市場で専門性を高めることができ、ニッチ市場で高いシェアの獲得が期待できます。

限られた資金や経営資源を有効活用できるため、中小企業にも適しています。

狙う顧客の声が届きやすく、商品の改良を素早く進めやすい点も強みです。

3つの戦略の比較と向いている企業

3つの戦略の比較と向いている企業のイメージ

ここで、3つの戦略の特徴を分かりやすく比較してみましょう。

  • 無差別型:対象は市場全体。1種類の商品を展開。大量生産型の企業に向いています。
  • 差別型:対象は複数セグメント。複数種類の商品を展開。資金力のある大企業に向いています。
  • 集中型:対象は1つのセグメント。特化した商品を展開。中小企業・専門企業に向いています。

項目を増やして並べると、次の表のようになります。

項目 無差別型 差別型 集中型
狙う市場 市場全体 複数のセグメント 1つのセグメント
商品 共通の1種類 セグメントごとに別々 その層向けに特化
広告・売り方 全国一律 セグメントごとに変える 狙う層だけに絞る
コスト 抑えやすい(規模の経済) 増えやすい(開発・広告・在庫) 総額は抑えやすい(範囲が狭い)
主なリスク 価格競争に巻き込まれやすい 管理が複雑になる 市場縮小の影響を直接受ける
向いている企業 大量生産型の企業 資金力のある大企業 中小企業・専門企業
試験の手がかり 市場全体・共通点 複数セグメント・個別対応 単一セグメント・専門化

架空の広告予算で比べると

ここでは、なごみ飲料が年間の広告費3,000万円を使う場合を考えます(数字はすべて説明用の架空の例です)。

無差別型なら、3,000万円で全国向けのCMを1本作り、全員に同じメッセージを届けます。

差別型なら、子ども・オフィス・贈答の3つに1,000万円ずつ分け、それぞれ別の広告を作ります。

集中型なら、3,000万円をすべてアウトドア好きの人に向けた広告に使います。

同じ予算でも、無差別型は「広く浅く」、差別型は「分けて届ける」、集中型は「狭く深く」届く形になります。

どれが正解かは会社の状況しだいなので、次の章の5つの視点で判断します。

自社に合う戦略の選び方|5つの判断視点

どの戦略を選ぶかは、経営資源・製品・市場・製品ライフサイクル・競合の5つの視点で判断します。

コトラーらのマーケティングの教科書でも、この5つが選ぶときの判断材料として挙げられています。

視点 こんな状況なら 向きやすい戦略
経営資源 資金や人手が限られている 集中型
製品の同質性 塩や砂糖のように品質の差が出にくい 無差別型
製品の同質性 自動車のようにデザインや機能で差が出る 差別型・集中型
製品ライフサイクル 導入期で、まず1種類を広めたい 無差別型・集中型
製品ライフサイクル 成熟期で、ニーズが分かれてきた 差別型
市場の同質性 買い手の好みがほぼ同じ 無差別型
競合の戦略 競合が市場を細かく分けて攻めている 無差別型は不利になりやすい

表の「向きやすい戦略」は目安で、5つの視点の結果が食い違うことも珍しくありません。

その場合は、最も動かしにくい条件である経営資源から先に考えると整理しやすくなります。

選ぶ前のチェックリスト

  • 自社の資金と人手で、複数の商品と広告を同時に回せるか
  • 商品は、品質やデザインで違いを出せるタイプか
  • 商品は、市場に出たばかりか、すでに成熟しているか
  • 顧客の好みは、ほぼ同じか、はっきり分かれているか
  • 競合は市場全体を狙っているか、細かく分けて攻めているか

1つ目が「いいえ」なら、まず集中型から検討するのが自然な流れです。

なお、狙うセグメント自体の良し悪しを見極める基準は、ターゲティングの選び方の記事で解説しています。

マーケティング検定で間違えやすい3つのポイント

試験でつまずきやすいのは、名前が似ている別の用語との取り違えです。

差別型と「差別化」は別の話

差別型は「どの市場を狙うか」の分類で、差別化は「競合とどう違いを見せるか」の考え方です。

差別化はSTPのP(ポジショニング)で扱うもので、無差別型や集中型の会社も差別化には取り組みます。

違いを見せる方法は、ポジショニングと差別化の記事で整理しています。

集中型とニッチャーは分類の軸が違う

集中型はターゲティングの分類で、ニッチャーは業界内の地位(リーダー・チャレンジャー・フォロワー・ニッチャー)による分類です。

ニッチャーは集中型を取ることが多いものの、2つは同じ意味ではありません。

地位ごとの戦略は、ニッチャー戦略の記事で解説しています。

「商品の数」ではなく「セグメントの数」で判定する

商品が多いから差別型、と判断するのはよくある間違いです。

1つの顧客層に向けて多くの商品を出す登山用品メーカーは、集中型に当たります。

反対に、狙う層を2つ以上に分けて商品や広告を変えていれば、商品数が少なくても差別型と考えます。

教科書によっては、地域や個人ごとに合わせる「ミクロマーケティング」を、さらに絞り込んだ段階として紹介しています。

試験対策としては、まず本記事の3つを確実に区別できることを優先しましょう。

架空の設問で確認

最後に、架空の設問で見分け方を確かめてみましょう。

  • 問1:地方の工務店が、平屋を建てたいシニア夫婦だけに絞って住宅を販売している。
    答え:集中型(狙う顧客層が1つ)
  • 問2:洗剤メーカーが、同じ洗剤を同じCMで全国に売っている。
    答え:無差別型(市場全体に共通の商品と広告)
  • 問3:文具メーカーが、学生向け・ビジネス向け・画家向けに別々のペンを出している。
    答え:差別型(複数のセグメントに別の商品)

迷ったら「何層を狙っているか」を先に数え、次に「層ごとに中身を変えているか」を見ると判断がぶれません。

まとめ

ターゲティング戦略3種類のまとめのイメージ

今回は、ターゲットマーケティングにおける3つの代表的な戦略について解説しました。

マーケティング検定2級の試験対策としても、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。

  • 無差別型:「みんなに同じ」アプローチ。市場全体を1つと考え、コスト効率が高い。
  • 差別型:「人によって変える」アプローチ。セグメントごとに異なる戦略を取り、顧客満足度が高い。
  • 集中型:「1つに絞る」アプローチ。特定市場に集中し、ニッチ市場向き。

まずは「全体・複数・一点集中」という基本的な違いを理解し、自社の強みや状況に合った最適な戦略を選ぶ参考にしてください。

この記事のまとめ

  • ✓ 無差別型は市場全体に同じアプローチをする戦略
  • ✓ 差別型はセグメントごとに戦略を変える手法
  • ✓ 集中型は特定市場に絞り込むニッチ向けの戦略
  • ✓ 見分けるときは「狙うセグメントの数」と「商品・広告を分けるか」を見る
  • ✓ 選ぶときは経営資源・製品・市場・ライフサイクル・競合の5つの視点で考える

▶ 次にやること

狙う市場の決め方が分かったら、次は競合とどう違いを見せるかを確認しましょう。

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dogarse

執筆者:dogarse(陸マイラー歴10年目)
飛行機にほとんど乗らずに累計20万マイル以上を貯めてきた、自分で実践した記録をもとに書いています。
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